転職活動においても、『言葉には、温度と重さがある』

転職活動においても、『言葉には、温度と重さがある』
「言葉には、温度と重さがある」——この言葉は、政治家・小泉進次郎氏が語ったものです。政治の世界では、言葉が人々の心を動かし、社会を変える力を持つことを日々実感しているからこそ、彼はこの言葉を口にしたのでしょう。
しかし、この言葉は政治家だけに限ったものではありません。むしろ、私たちの日常の中でも、そして転職活動という人生の節目においても、深く関係してくるものです。特に、転職活動の第一関門である「書類選考」においては、この「言葉の温度と重さ」が合否を分ける重要な要素となります。
書類選考は「言葉のプレゼンテーション」
転職活動は、履歴書や職務経歴書の提出から始まります。これらの書類は、単なる事務的な情報の羅列ではなく、自分自身を相手に伝えるためのプレゼンテーションツールです。つまり、「私はこういう人間です」「こんな経験をしてきました」「こんな価値を提供できます」というメッセージを、言葉を通じて相手に届けるための手段なのです。
ところが、多くの方がこの書類作成において、マニュアル本やネットのテンプレート、ハローワークのアドバイスなどをそのまま引用してしまいます。もちろん、参考にすること自体は悪いことではありません。しかし、それらをそのまま使ってしまうと、読み手にはすぐに「型通りだな」「本人の言葉ではないな」と伝わってしまいます。そして、その瞬間に、書類から「温度」と「重さ」が失われてしまうのです。
「温度」と「重さ」がある言葉とは
では、「温度」と「重さ」がある言葉とは、具体的にどのようなものでしょうか。
「温度」とは、言葉に込められた感情や熱量です。自分がどれだけその仕事に思い入れがあるのか、どんな経験を通じて何を感じたのか、どんな未来を描いているのか——そうした想いが言葉に乗っていると、読み手はその熱を感じ取ります。
一方、「重さ」とは、言葉の裏にある事実や実績、責任感です。単なる感情論ではなく、具体的な成果や行動、数字などが伴っていることで、言葉に説得力が生まれます。
この「温度」と「重さ」が両方備わっている言葉こそが、読み手の心を動かし、「この人に会ってみたい」と思わせる力を持つのです。
実際の転職成功事例:言葉が心を動かした瞬間
ある30代の男性、Aさんの転職活動のエピソードをご紹介します。彼は中堅の税理士法人で10年間勤務し、主に法人顧客の税務顧問業務を担当していました。専門性は高く、実績も十分。しかし、転職活動を始めた当初、書類選考でなかなか通過できず、悩んでいました。
彼の職務経歴書は、業務内容や実績が淡々と並んでいるだけで、読み手に「この人に会ってみたい」と思わせる要素が乏しかったのです。数字や成果は記載されていても、そこに「なぜその仕事に取り組んだのか」「どんな工夫をしたのか」「どんな価値を提供したかったのか」といった“温度”がなかったのです。
そこで彼は、自分の言葉で書き直すことにしました。たとえば、以下のような表現に変えました:
> 「顧問先の経営者が“税務は難しい”と感じる瞬間を減らしたいという思いから、専門用語を極力使わず、図解や事例を交えた説明を心がけました。その結果、顧問契約の継続率が前年比15%向上しました。」
この一文には、彼の仕事への姿勢、顧客への思いやり、そして具体的な成果が込められています。まさに「温度」と「重さ」が共存している言葉です。
この書き直し後、彼は応募した3社すべてで書類選考を通過し、最終的には希望していた成長中の会計事務所に転職を果たしました。面接では「職務経歴書の言葉に誠実さと熱意を感じた」と言われたそうです。
採用担当者の視点:心を動かす言葉とは
では、採用担当者はどんな言葉に心を動かされるのでしょうか。実際に複数の採用担当者にヒアリングした中で、共通して挙がったポイントを紹介します。
「その人らしさ」がにじみ出ている言葉
> 「テンプレート的な文章はすぐにわかります。そういう書類は、どんなに経歴が立派でも印象に残りません。逆に、少し不器用でも“自分の言葉”で書かれていると、読みながらその人の顔が浮かぶような感覚になります。」
採用担当者は、書類の向こうに“人”を見ています。だからこそ、個性や価値観がにじみ出る言葉に惹かれるのです。
「なぜそれをやったのか」が語られている言葉
> 「成果だけでなく、そこに至るまでの背景や動機が書かれていると、仕事への姿勢が伝わってきます。数字だけでは語れない“人間性”が見えると、会ってみたいと思います。」
単なる実績の羅列ではなく、「なぜその仕事に取り組んだのか」「どんな課題をどう乗り越えたのか」といったストーリーがあると、言葉に深みが生まれます。
「相手目線」がある言葉
> 「自分の経験を語るだけでなく、応募先の企業にどう貢献できるかを意識して書かれていると、非常に好印象です。“この人はうちのことをちゃんと考えてくれている”と感じます。」
採用担当者は、「この人がうちに来たらどうなるか」を常に考えています。だからこそ、相手目線で書かれた言葉は、強く響くのです。
自己満足ではなく、相手に届く言葉を
履歴書や職務経歴書を作成する際には、まず「自分の言葉」で書くことが何よりも重要です。テンプレートに頼らず、自分の経験を自分の視点で語る。自分が何を考え、何を感じ、どう行動してきたのかを、自分の言葉で表現することで、初めて「温度」が生まれます。
そして、その言葉に具体的な成果や数字、エピソードを添えることで「重さ」が加わります。さらに、相手に伝わるかどうかを意識し、第三者の目で確認することも忘れてはいけません。自己満足で終わらせず、相手の心に届く言葉を目指すことが大切です。
最後に——言葉を磨くということ
転職活動は、自分自身を見つめ直し、未来に向けて新たな一歩を踏み出すための大切なプロセスです。その中で、言葉を磨くことは、自分自身を磨くことでもあります。
「言葉には、温度と重さがある」——この言葉を胸に、自分の言葉で、自分の想いを伝えてみてください。きっと、あなたの言葉が誰かの心に届き、次のステージへの扉を開いてくれるはずです。
ではまた
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