顕在化された求人だけでなく、潜在的求人が大切 ──「見える求人」だけがすべてではない。可能性は、静かに眠っている。

顕在化された求人だけでなく、潜在的求人が大切
──「見える求人」だけがすべてではない。可能性は、静かに眠っている。
転職活動を始めると、多くの人がまず目にするのは、求人サイトやハローワークなどに掲載されている「求人情報」です。これらは企業が明確に「人材を募集しています」と表明している、いわば“顕在化された求人”です。欠員が出た、事業を拡大する、業務が多忙になった、担当者が定年退職するなど、企業側に何らかの人員的な課題が生じた結果、採用活動を開始している状態です。
このような求人は、誰でもアクセスできる情報であり、転職活動のスタート地点としては非常にわかりやすく、安心感もあります。条件や仕事内容が明示されているため、比較検討もしやすく、応募のハードルも低いでしょう。
しかし、実はこの“顕在化された求人”だけを見て転職活動を進めることには、大きな落とし穴があります。それは、企業がまだ求人を「表に出していない」段階の、“潜在的な求人”の存在です。
潜在的な求人とは何か?
潜在的な求人とは、企業が「今すぐに人を採用したいわけではないが、良い人がいれば採用したい」と考えている状態の求人です。これは、求人サイトやハローワークには掲載されていないため、一般的には目にすることがありません。企業の中で「このポジション、そろそろ強化したいな」「今の体制では少し不安がある」「新しい事業を始めるかもしれない」といった思惑があるものの、まだ明確な採用活動には至っていない段階です。
このような求人は、実際には非常に多く存在しており、顕在化された求人と同程度、あるいはそれ以上の数があるとも言われています。特に、柔軟な組織運営をしている企業では、「良い人がいれば採用する」というスタンスが一般的です。
潜在的求人の具体事例
たとえば、以下のようなケースが潜在的求人に該当します:
- 税理士法人が、現在欠員はないけれど、将来のクライアントの拡大のために、人材を充実させたい。
- ITベンチャーが新規プロダクトの構想段階にあり、開発リーダーを探しているが、予算確定前のため求人を出していない。
- 税理士法人が、来年に新規事務所開設計画があり、そろそろ求人を出そうかと考えている。
- 小規模な出版社が、編集者の高齢化に伴い、次世代の人材を探しているが、紹介ベースで動いている。
これらはすべて、「求人票には載っていないが、実際には採用意欲がある」状態です。
潜在的求人に出会った人のエピソード
ある30代の女性は、育児と両立できる仕事を探していました。求人サイトでは条件に合うものが見つからず、思い切ってSNSで「こういう働き方ができる職場を探しています」と発信したところ、知人経由で地元の税理士事務所から「うちで週3日から働いてみませんか?」と声がかかりました。実はその会社は、業務量が増えていたものの、求人を出すほどではないと考えていたそうです。結果的に彼女はその会社で柔軟な働き方を実現し、今ではリーダーとして活躍しています。
TKC視点で考える転職戦略
TKC(多面的・根本的・長期的)な視点は、潜在的求人にアプローチする際にも非常に有効です。
- **多面的(多角的)視点**
顕在化された求人だけでなく、企業の状況、業界の動向、人脈、SNSなど、複数の情報源から求人の可能性を探る。
- **根本的視点**
「なぜその企業は人材を必要としているのか?」「自分はどんな価値を提供できるのか?」という本質的な問いを立て、単なる条件マッチではなく、価値の交換としての転職を考える。
- **長期的視点**
今すぐの採用だけでなく、将来的なポジションや成長の可能性を見据えてアプローチする。企業との関係性を築きながら、タイミングを待つという選択もある。
潜在的求人にアプローチする際の注意点
潜在的求人にアプローチする際には、いくつかの注意点があります。
- **押しつけにならないようにする**
「御社で働きたいです!」という熱意は大切ですが、「こういう形で貢献できます」「こういう課題に対して自分の経験が活かせます」と、相手の立場に立った提案が重要です。
- **タイミングを見極める**
潜在的求人は、企業側もまだ迷っている段階です。焦らず、関係性を築きながら、適切なタイミングで話を進めることが求められます。
- **信頼を積み重ねる**
紹介や人脈を通じて出会うことが多いため、日頃からの信頼構築が大切です。SNSでの発信、勉強会での交流、過去の仕事ぶりなど、すべてが「信用通貨」になります。
- **条件交渉は柔軟に**
潜在的求人は、ポジションや報酬が固定されていないことも多いため、自分の希望を伝えつつ、企業の事情も理解しながら柔軟に交渉する姿勢が求められます。
顕在化された求人と潜在的求人、どちらも大切
転職活動においては、顕在化された求人だけを見ていては、可能性の幅が狭くなってしまいます。もちろん、明示された条件や仕事内容をもとに応募することは重要ですが、それだけでは「本当に自分に合った仕事」に出会える確率は限られます。
一方で、潜在的求人は、情報収集や人脈づくり、発信など、少し手間はかかりますが、その分、自分の価値を最大限に活かせるチャンスが眠っています。企業側も「この人ならぜひ採用したい」と思えるような人材に出会えれば、採用枠を新たに作ることもあります。
つまり、転職活動とは「求人情報を探すこと」ではなく、「自分の価値を伝え、必要とされる場所を見つけること」なのです。
最後に
求人には、「顕在化された求人」と「潜在的な求人」があります。前者は誰でもアクセスできる情報であり、後者は見えにくいけれども、非常に大きな可能性を秘めています。転職活動を成功させるためには、この両方を意識し、戦略的に動くことが重要です。
特に、人生の転機やキャリアの再構築を考えている方にとっては、「潜在的求人」に目を向けることで、思いもよらないチャンスが広がるかもしれません。自分の価値を信じて、積極的に動いてみてください。
ではまた。
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