面談で大切なことは、語られないことに耳を傾ける
kawane
面談で大切なこと：語られないことに耳を傾ける
はじめに
転職コンサルタント川根です。
私たち転職コンサルタントの仕事は、企業が求める人材と、転職を希望する人材を結びつけることです。企業の採用責任者に話を聞き、転職希望者に話を聞き、その両者をつなぐ提案を行います。表面的に見れば、情報を受け取り、それを相手に伝える「伝言請負人」のような役割に見えるかもしれません。しかし、それだけであれば、ネット上の転職サイトで十分に代替できてしまいます。
本当に価値のあるコンサルティングとは、言葉として語られた情報だけでなく、「語られないこと」に耳を傾けることにあります。そこにこそ、マッチングの精度を高めるための重要なヒントが隠されているのです。
語られないことの存在
人は誰しも、自分の考えや希望を完全に言語化できるわけではありません。企業も同じです。求人票や面接で語られる内容は氷山の一角に過ぎず、その背後には言葉にならない期待や不安、事情が潜んでいます。
転職コンサルタントが耳を傾けるべきは、まさにその「語られない部分」です。そこを理解できなければ、表面的な条件のすり合わせに終始し、真の意味でのベストマッチングには至りません。
語られない理由は何か
語られないことが生じる理由は、大きく分けて三つあります。
- 自分自身でまだ理解できていないため
求職者は、自分の希望や価値観、セールスポイントを完全に把握しているわけではありません。企業もまた、求める人物像を明確に言語化できていない場合があります。 - 理解はしているが、正しく伝えられないため
頭の中では分かっていても、相手に分かりやすく説明することは難しいものです。言葉の選び方や表現力の不足によって、真意が伝わらないことがあります。 - 伝えることで不利になると考え、あえて伝えないため
求職者は「弱みを見せたくない」と思い、企業は「課題を隠したい」と考えることがあります。その結果、重要な情報が意図的に語られないまま残されるのです。
企業側に潜む「語られないこと」
企業が求人票に記載する条件は、必ずしも本音ではありません。例えば「即戦力を求める」と書かれていても、実際には「育成を前提にした人材を採用したい」とも考えている場合があります。
また、社風や職場の雰囲気、上司の人柄などは求人票には書かれません。採用責任者が面談で語る内容も、会社の公式スタンスに沿ったものになりがちです。そこに潜む「語られないこと」を読み取るには、質問の仕方や会話の流れに注意を払う必要があります。
求職者側に潜む「語られないこと」
求職者もまた、自分の希望をすべて語れるわけではありません。例えば「安定した会社に入りたい」と言いつつ、本音では「新しい挑戦をしたい」と思っている場合があります。あるいは「年収を上げたい」と語りながら、実際には「ワークライフバランスを重視したい」という価値観を持っていることもあります。
さらに、過去の失敗や不安を隠すために、あえて語らないこともあります。転職コンサルタントは、その沈黙の裏側にある心理を理解しなければなりません。
語られないことに耳を傾ける技術
では、どうすれば語られないことに耳を傾けられるのでしょうか。
- 質問の仕方を工夫する
「なぜその条件を希望するのですか？」と掘り下げることで、表面的な言葉の奥にある本音が見えてきます。 - 沈黙を恐れない
相手が言葉に詰まったとき、その沈黙にこそ重要な意味がある場合があります。急いで埋めようとせず、待つことが大切です。 - 非言語的なサインを観察する
表情、声のトーン、間の取り方など、言葉以外の要素から真意を読み取ることができます。 - 信頼関係を築く
安心して語れる環境を作ることで、相手は隠していた本音を少しずつ開示してくれます。
ベストマッチングへの道
転職は「条件の一致」だけでは成功しません。企業と求職者の価値観や文化が合致して初めて、長期的な満足につながります。そのためには、語られないことに耳を傾け、言葉にならない期待や不安を理解することが不可欠です。
転職コンサルタントは、単なる情報の仲介者ではなく、双方の「語られない部分」を読み解く翻訳者であるべきです。そこにこそ、私たちの存在意義があります。
結論
企業も求職者も、語ることのできる情報には限界があります。だからこそ、転職コンサルタントは「語られないこと」に耳を傾ける必要があります。
- 自分で理解できていないこと
- 正しく伝えられないこと
- あえて伝えないこと
これらを丁寧に拾い上げることで、より精度の高いマッチングが可能になります。転職は人生の大きな転機です。その成功を支えるために、私はこれからも「語られないこと」に耳を傾け、ベストマッチングを目指していきたいと思います。
ではまた。
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【川根博のプロフィール】
人材業界で約15年経験後、株式会社パブス設立。 これまで、1000人以上の転職希望者と面談し転職をサポートしてきました。 現在は、転職エージェントとして地元企業や地元税理士事務所への転職支援を行いながら、地元中小企業の経営サポートや、スモールビジネスの起業サポート等、多岐にわたって活躍中。
・株式会社パブス HP▼ https://www.pabs.jp/
・会計job HP▼ https://kaikeijob.com/
