書かないことで、相手に正しく伝わる職務経歴書もあります

書かないことで伝える力──履歴書・職務経歴書における“選択”の大切さ

「書面で、伝えるためには、書かなければなりません。書かなければ、伝わりません。しかし、書かないほうが伝わることもあります。」

この言葉は、履歴書や職務経歴書の本質を突いています。書類選考という限られた時間と情報の中で、採用担当者に「逢ってみたい」「話してみたい」と思わせるには、ただ情報を羅列するだけでは足りません。むしろ、何を“書かないか”という選択が、あなたの魅力を際立たせる鍵になるのです。

書類の目的は「逢いたい」と思わせること

履歴書や職務経歴書は、過去の記録を並べるためのものではありません。企業に「この人に会ってみたい」と思わせるためのプレゼン資料です。つまり、書類は“未来”を語るための“過去”の編集作業なのです。

そのためには、志望する職種や業種に関連する情報を中心に構成する必要があります。関連性の高い資格や経験は丁寧に記載し、逆に関連性の低い情報は控えめに、あるいは思い切って削除する勇気も必要です。

具体的な事例紹介:良い履歴書/悪い履歴書の比較

ここで、実際にあった事例をもとに、履歴書・職務経歴書の「良い例」「悪い例」を比較してみましょう。

ケース1:資格欄の記載

❌悪い例:
資格欄に「普通自動車免許」「英検3級」「調理師免許」「簿記3級」「色彩検定2級」「TOEIC500点」など、取得した資格をすべて記載。

✅良い例:
「宅地建物取引士(2022年取得)」「不動産キャリアパーソン(2023年取得)」のみ記載。志望職種が不動産営業であるため、関連資格に絞って記載。

→悪い例では、関連性のない資格が並ぶことで、採用担当者の視点が分散し、肝心の宅建資格の印象が薄れてしまいます。良い例では、関連資格に絞ることで「この人は不動産業界に本気で転職したいのだな」と伝わります。

ケース2:職務経歴の記載

❌悪い例:
「2008年〜2023年:飲食店勤務(ホール・キッチン)」「2023年〜現在:事務職(派遣)」とだけ記載。業務内容の詳細なし。

✅良い例:
「2008年〜2023年:飲食店勤務
・店舗運営補助(売上管理、シフト作成)
・クレーム対応、顧客満足度向上施策の実施
2023年〜現在:派遣事務職
・受発注業務、請求書作成、電話・メール対応
・Excelを用いた在庫管理表の作成」

→悪い例では、職歴の羅列だけで、どんなスキルを持っているのかが伝わりません。良い例では、業務内容を具体的に記載することで、事務職への適性やスキルが明確になります。

採用担当者の視点から見た「伝わる書類」とは

採用担当者は、1日に何十枚、時には百枚以上の書類に目を通します。限られた時間の中で「この人に会ってみたい」と思わせるには、以下のポイントが重要です。

1. 一貫性があるか

志望動機、職務経歴、資格欄に一貫性があると、「この人はこの職種に本気だ」と伝わります。逆に、バラバラな情報が並んでいると、「方向性が定まっていない」「なんとなく応募しているのでは?」と疑われます。

2. 情報の取捨選択ができているか

すべてを詰め込むのではなく、必要な情報だけを選び抜いている書類は、読みやすく、印象に残ります。これは「思考力」「戦略性」の証でもあります。

3. 読み手の視点に立っているか

自分が伝えたいことではなく、「相手が知りたいこと」を中心に構成されている書類は、採用担当者にとって非常にありがたい存在です。たとえば、業務内容を「成果」「数字」「改善点」などで具体的に示すと、評価しやすくなります。

書類は「自分を語る鏡」

履歴書や職務経歴書は、単なる情報の集積ではなく、自分自身を語る鏡です。その鏡に何を映すか、何を映さないか。その選択が、あなたの未来を左右します。

「書かないことで伝える力」は、情報過多の時代において、ますます重要になっています。限られたスペースと時間の中で、いかに的確に、魅力的に、自分を伝えるか。そのためには、書く技術だけでなく、削る技術も磨いていく必要があります。

最後に──「逢いたい」と思わせるために

履歴書や職務経歴書は、あなたの分身です。その分身が、企業の担当者に「逢ってみたい」と思わせるかどうかは、あなたの“選択”にかかっています。

書くことは大切です。しかし、書かないこともまた、同じくらい大切です。情報を選び、構成し、伝える。その一つひとつの判断が、あなたの未来を形づくっていきます。

ぜひ、書類作成の際には「何を書くか」だけでなく、「何を書かないか」にも意識を向けてみてください。きっと、あなたの魅力がより鮮明に、より力強く、相手に届くはずです。

ではまた。

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